旅を通して、人と文化の交流システムを作りたい。
移動する商人文化のイスラーム世界の交易と巡礼旅のシステムを活用して、
今の個人旅や仕事に生かせたら素敵だなあと思ってきた。
今のように交通システムが整っていない頃でも、昔から多くの冒険家が巡礼を主な目的としてイスラーム圏の世界旅をしていた。
中でも私の好きな人はイブン・バットゥータだ。
イブン・バットゥータ
イブン・バットゥータ(英語: Ibn Battuta[ˌɪbənbætˈtuːtɑː]、アラビア語: أبو عبد الله محمد بن عبد الله اللواتي الطنجي بن بطوطة, アブー・アブドゥッラー・ムハンマド・イブン・アブドゥッラー・アッ=ラワーティー・アッ=タンジー、1304年2月24日/25日 – 1368年/69年)は、マリーン朝のベルベル人の探検家である。彼の旅行記『諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物』(تحفة النظار في غرائب الأمصار وعجائب الأسفار tuḥfat al-naẓār fī ġarāʾib al-ʾamṣār wa-ʿaǧāʾib al-ʾasfār、通称Rihla)にまとめられた広範にわたる旅行で知られ、30年間をかけ既知のイスラム世界、そして非イスラムの地を旅した。彼の旅した地には北アフリカ、アフリカの角、西アフリカ、東ヨーロッパ、中東、南アジア、中央アジア、東南アジア、中国が含まれる。史上最も偉大な旅行家の一人と考えられている。(wikipediaより)
彼が30年近くにわたって、しかも当時知られていた旧大陸の西ヨーロッパを除くほぼ全域にわたる大旅行を続けたのは、おそらく彼自身が未知の世界に憧れるままに、旅に生き、旅に学び、旅を人生としていたからだろう。
そのイブンバットゥータと、同じく偉大なスペイン生まれの旅人イブン・ジュバイルの旅行記(リフラ)から、イスラーム世界の交通と旅のシステムについて言及している本があった。
この本がめちゃくちゃ面白いのだが、文中に巡礼旅の醍醐味が書かれている箇所がある。
巡礼の旅は、神の意思に基づいて、宗教的義務を果たそうとする個人または集団の強い信仰心に支えられたものであるが、
旅の出発地と目的地のメッカとの間の長い旅路の中で見聞する未知の地域との遭遇、新たな学問習得、学者・知識人や有徳の人との面識や人脈の構築、途中の聖墓や聖地の参拝、世界情勢の把握、そして亡命・移住や出稼ぎと、商売の多様な目的と動機を併せ持っていた。
アラブの歴史家イブン・ハルドゥーンは、「旅とは諸学研究のためであり、学問技芸などを教授する師匠との出会いによって教育の感性を目指すこと」と定義付けている。(中略)このようにして、多くのムスリム(イスラム教徒)はメッカ巡礼を一つの機会として、狭い血縁・地縁関係や国家(などの自分の殻や常識から外に)出て、多種多様な国と地域を占めるイスラーム文化共同コミュニティ(ウンマ)の一員として、広範に旅・移動して(学んで)いたのである。
当時のイスラーム圏の旅を知る上で、気になるキーワードがいくつかある。
ジワール(相隣関係)
都市内での住民や部族の相互関係を規制するための慣習であり、社会的なエチケット。
旅人や客人についても、近隣の仲間として認め合い、一時的に滞在を許す寛大さや保護関係のことを指す。
旅における仲間関係の成立や、もてなし・客人保護とも重なる所がある。
ラフィーク(旅の仲間)
少人数での同志、仲間関係にある人々。気のあった友達。
ラフィークは相隣関係(ジワール)を結ぶことが多く、乗り物・食料・飲料などを分け合ったり、病気の介護や盗賊の危険にも共に対処する。ジワールを結んだラフィークがそのまま旅をすることもあるが、隊商について旅することもある。
キャラバン(隊商)
キャラバンは、商人達が商品の輸送中に盗賊団などの略奪、暴行などの危険から集団的に身を守り、商品の安全やいざというときの保険のために、複数の商人や輸送を営む者が共同出資して契約を結ぶことによって組織されていた商業隊列。主にイスラムやイスラム周辺の地方を回るが、そのためにさまざまな文化が混淆し・イスラーム文明が繁栄するきっかけとなってきた。
ディヤーファ(客人保護)
客人(異人)を温かくもてなして、身の安全や所有物を保護すること。
どこまでも続く炎天下の砂漠での長期間での旅は想像以上に過酷である。旅路には砂嵐や豪雨、猛暑などの自然の猛威や、商品や食料品を狙う強盗も多い中で、いかに安全に商品や人間を目的地に届けるかというところで、同じイスラム圏コミュニティという中で助け合い、その意味が広がって旅人や異人には親切にするお互い様精神が培われてきたと言える。
そう言った、「旅」でのご縁から仕事やコラボ(バザールやイベント)や、新鮮な情報交換等が豊かに広がって行く動線(パイプ)を作り、さらに都市と地域間での人や文化が交流しやすい隊商宿のような拠点をリアルとウェブから自己流に作ることができないか。
それが私のずっと考えていることなのである。