【ウイグル2016.5】妖怪の棲む山々を越えて中パ国境の秘境、パミール高原のカラクリ湖へ
中国の西の果てのカシュガルのさらに西の果ての果てにある、キルギスとパキスタンと中国の国境付近のキルギスタン自治区。
と言っても、キルギス人は高山地帯に遊牧をして暮らす貧しい民族なので、住む場所と言っても、7000mクラスの崑崙山脈を望むパミール高原の赤い禿山しかない。赤は鉄分からくるもの。切り立ったむき出しの禿山はすごい迫力で、バス越しでも眼前に迫る急さ。そしてところどころの絶壁が顔に見えることから、最遊記で妖怪が住んでると言われるようになったのも分かるくらいこわい。そして常に風がふきすさび、その音が山々の斜面を通り抜け、怪しく鳴いているように聞こえるのだ。
三蔵法師がこんな涙が出そうに怖い山々を、未舗装の道なき道を彷徨いながら徒歩で登り、7000mの山々を越えて天竺に行ったなんて信じられない。大唐西遊記での頼りないキャラからは想像もつかないが、よほど三蔵法師は屈強な旅人だったに違いない。
しかしそんな場所でも、想像した通りの平い顔のキルギス人が、こんなところに人が住めるのか!?と思うような高地に煉瓦造りの家に住んでいる。土産物を売りつけに来るのはイヤだが、お昼ご飯をいただいたところの主人は優しげで品がよかった。さっぱりしたヤギのヨーグルトや、甘い揚げパンを薄くしたような飾りのないキルギスナン、バター茶、その他は低地より取り寄せた食材でいつもの料理が出てくる。ゲルの内装はうつくしくて目をみはる華やかさ。お客用に作ったとしても素晴らしい出来。ちゃんと窓のようなめくれる場所が付いていて、そこから料理を差し入れている。
3000mクラスの高地にもなると、そこにはウマや、ヤクなどが放牧されている。生のヤクを始めてみて感動。低い土地にはラクダやヒツジ、ヤギなどが耳に持ち主のタグを付けられて放されてる。
いかにも想像通りのキルギス人が、全くもって想像を超えた生活をしている。さすが国境。
国境付近、県境には検問所が貼られており、一人一人バスを降りてパスポートを見せて通過する。緊張感。通り過ぎるのはウイグル人のほかに、タジキスタンやパキスタンぽい顔立ちの人々。浅黒くヒゲが長くて、そう、まさしくビンラディンのような顔立ちだ。たくさんのビンラディン兄さん達が、ヘルメットもつけず、普通バイクに二人乗りで4000m級の瓦礫ばかりが続くガタゴト道を何時間もかけて平気で登っていく。食料もなく、途中でエンコしたら一貫の終わりなのにツワモノだ。