2016-11-20
夜の旅語り〜物事の前進の光と闇〜
今宵はお約束通りスペインポルトガルなど、15世紀の船乗りたちによって起きた世界秩序の転換点の話をいたしましょう。
今の地球でわたしたちが今グローバル化が進んだ西欧的な生活をしているのも、ここが全ての始まりだと考えています。
世界においてですね。
無知蒙昧で遅れたヨーロッパを今の強くて進んだイメージのヨーロッパたらしめて、
豊かで進んだ文明のイスラムを今の後進的で野蛮なイメージのイスラムにたらしめた、
そんな歴史の大転換点があるとすれば、それは疑いようもなく大航海時代と言えるでしょう。
そして、それは人間の暮らしや働き方への影響を与えただけでなく、あらゆる動植物の生態系や、その後の文明や人間の価値観をも根底から変えるほどの衝撃を世界に与えました。
これが、「コロンブスの交換」と呼ばれるものです。
ええ、わかっております。
たしかに西洋のお話なんて、イスラム文化に惹かれてきたわたくしらしくも無いですよね。
ですが、わたくしの興味は後にも先にも
「なぜ豊かなるイスラム文化が世界史から消えたのか」という疑問の探究に尽きるのです。
その核心を知るには、わたくしはキリスト教徒が多い西欧のスペインとポルトガルへ行き、船乗りたちが変えた歴史を自分の目で知る必要がありました。
ですから、しばらくは船乗り達の話にお付き合いくださいませ。
大航海時代と歴史の転換を語る上で外せない人物が二人います。
一人はエンリケ王子。彼はポルトガルを代表する歴史上の人物で、「エンリケ航海王子」と呼ばれております。しかし、彼は実際にはほぼ航海をしたことがありません。正確には、彼は「航海させ王子」だったようで、意欲的に新境地の開拓に邁進し、アフリカ大陸西岸に拠点を設け、その後見つけられる喜望峰を超えて東回り航路を完成しました。思えばポルトガルはこの頃が一番輝いていました。
もう一人はコロンブス。
言わずもがなのアメリカ新大陸を発見したと言われる偉大な人物ですが、この描写には色々あるようです。
コロンブスが発見する以前にも、すでにアメリカ大陸自体の存在は知られていたものの、誰も実際に見つけてはいなかった。若きコロンブスは、何か一山当てようとお偉いさんのデスクを夜な夜な漁っていたところこの事実を知り、ポルトガルにまずは売り込みました。しかし、申し上げた通りすでにポルトガルはエンリケ航海王子によってアジアに抜ける東回り航路を完成しており、新たに新大陸を発見して航路を築くリスクを負う必要がなくなっておりました。
そこで、あっさり追い返されたコロンブスは、今度はスペインに売り込みます。俺に航海させてくれたら、莫大な利益を生む新大陸を見つけ、ポルトガルに負けない新しい海上流通ルートを作ってみせる、と。ポルトガルの躍進に焦っていたスペインは、これを許可し、彼のパトロンとなり援助しました。その結果、彼はアメリカ大陸を発見し、地球が丸いという地の利を生かした西回り航路を確立したのです。これが1492年の出来事と言われております。
ちなみにコロンブスは、アメリカ大陸からの帰路で船が流され、ポルトガルの押さえているアフリカ大陸西岸に流れ着いてしまいます。ここで、ポルトガルは思うんですよね。
「あっ!しくったーーーー!!コロンブスの話聞いときゃ良かったーー。ホントに見つけやがってやばいじゃん!」
でも、そこは寛大さを示し、コロンブスを殺したりはせず、帰国させてあげます。
もしここでコロンブスがポルトガルに殺されていたら、ガラッと歴史と世界秩序が変わって、日本も例外なく現代は全く違ったものとなっていたかもしれません。
ポルトガルの「発見のモニュメント」より。
工事中だったので、本物は見られず。
右端がエンリケ航海王子。
航海王子とか言いつつ、実際に海に出たのは二回と、現地の方から教えていただきました。
さて、
このエンリケ航海王子と、コロンブスが与えた世界への影響は主に以下の五つだと考えます。
ひとつめ、アメリカ大陸の現地民族の滅亡とアフリカ人奴隷の移入
ふたつめ、動植物など自然生態系への影響
みっつめ、ヨーロッパの人口増加
よっつめ、産業の工業化(カネと時間と消費)と
グローバル化
いつつめ、価値観、ライフスタイルの変化
これらが、イスラムの歴史にも大きな影響を与えます。そして、わたくしたちの現代のライフスタイルの元にもなっております。
自分たちの今の日常生活や価値観がどこから来たものなのか不思議に思ったことはございませんか?
遠くアジアの国ではサムライの時代から大きな変革を遂げてヨーロッパスタイルとなったようです。では、そのヨーロッパスタイルとはどこから来たのか?また、それらの生活様式がヨーロッパスタイルとイメージされる所以については?
価値観もライフスタイルも不変ではありません。
産業構造が長らく同じなので不変に見えているだけです。これが現代の様々な課題に直結しています。
それらを発見いただくためには、もう少し大航海時代、およびそれ以前のお話を語らねばなりますまい。
では、またの夜にお目にかかるまでしばらく
ご機嫌麗しゅう。
あなたの明日が恵多き時間となりますように。
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