チキンライスはマラッカでなぜ丸くなるのか〜チキンライスボールの不思議〜
東南アジア風チキンライスと言われて何を思い浮かべるだろうか。
一般的なチキンライスは、お皿に盛られたごはんに茹で鶏が載っているスタイル。
普通はこうなる。日本の多くの海南チキンライスのお店でも、このスタイルで出てくるところが多い。
しかし、マラッカのチキンライスは、直径3cmほどの大きさに丸められている。まるでおにぎりのようだが、ボール状に丸く強く握られていて米粒がつぶれそうになって、モチモチしている。そのため、小さくみえてもずっしりしている。空気が全く入っている気配がない。
この形は、かつて商人が天秤棒を担いで街でチキンライスをボール状にして売り歩いていた頃の名残で、労働者が作業の途中でも食べやすいようにごはんを丸くしていたらしい。
しかし、天秤棒も時代とともになくなり、チキンライスが食堂で普通に食べられるようになって、手間のかかる丸型からお皿への盛り付けへと変化。
その中でも、マラッカでは敢えてその形を残し続けていたせいか、今ではライスボールが定着し名物となっている。つまり、「ライスボール」と言われているものの、チキンスープとハーブ(パンダンリーフなど)で炊き込んだチキンライスと別物の料理ではないのだ。
私はまったくもって勘違いしていた。マラッカならではの何か独特な理由があるに違いないと思ったのはいいが、それは味ではなく形だったのだ。
これは日本で言うところの「おにぎり」に通じるものがあるが、歴史的にも何か関係があるのかもしれないなと思った。確かに食べやすいのは間違いないが、フォークや箸がある場合、むしろ一個ずつ食べていかないといけないので、少し面倒臭く感じる。
携帯食でなくなった瞬間に、歴史の遺物となってしまったライスボールだが、現代のマラッカでは尊い名物となっている。