【BOOK】デジタルマーケティングの先にあるもの〜Tools and weapons〜
おもしろい。 デジマやDXは一通りみんな取り組んだ結果、できることが想定以上に増えすぎて逆にコントロールできなくなってきた。その焦燥感から、最近はWEBや情報のリテラシー強化や防衛技術のフェーズに移行しているなあと個人的に思う。技術自体もコードレスやオープン化で、だいぶ民主化されて誰でもできるようになったし。 そんななか、この本が面白い。
社内のWEBのアクセス解析環境の構築や、分析、表示の最適化(ターゲティング)、WEB動線改善、といったデジタルマーケや、DX(デジタルトランスフォーメーション)の前線の仕事を離れて4〜5年経つが、それでも自身の実感と、世間一般で話題になるタイミングと5〜8年くらいのタイムラグを感じることがある。日本は個人情報やデータの保護に関して特に関心が低いと言うか、、遅い。かなり。まあこれは良いとか悪いとかって言う問題より文化的特質なんだけど。
そういうWEBマーケ関係での再就職をしておけば簡単だったなあと思い出しながら、その一方で座りすぎで腰がやられて一時期WEBの仕事から離れたくなっていた時期もあり、なかなか複雑である。ただ、気が向いたらまた挑戦しようという感じだったので、今でもツールや技術、法令に関する興味はとてもある。(マーケティングそのものよりも、いろいろな解析ツールの仕込みやレポートの組み方などWEBのお医者さん的なことが学べたことが面白かった)
その流れで、最近また海外向けの企業HPの対応とか、プライバシーポリシーなどを見るのが趣味になっている。 不思議なのが、コロナで対面営業が厳しくなって、WEBでの獲得・申し込みだー!と海外向けにWEBコンテンツとか作っているのに、プラポリを見たら、個人の閲覧データ取得活用の説明や仕込んでいるマーケティングタグや解析ツールの申告は真っ白とかいうことが、それなりに大きいはずの会社でもまだある。
この本の一章に出てくるFB(ひいてはアメリカ)をプライバシーで訴えたシュレムス(学生)は、アメリカ企業の無関心を変えた。それからいろいろあるのだけど、欧州のデータ管理に対する危機意識で欧州データ保護指令(欧州域外への個人閲覧情報の移転を制限)とか、それに批准してる前提でアメリカにデータ移転使用を許可するセーブハーバー原則とか、シュレムスの件でプライバシー保護の実効性を再考されて出来た「プライバシーシールド」とか、もちろん流行りのGDPRとか、そのへんの攻防に当時リアルタイムで影響受けてて(大いに振り回されたとも言う)、なんとか法務を説得して海外データの解析や利活用のシステムを合法的に使えるように頭を悩ませていたころは、『欧州は手厳しすぎるし、アメリカもなんて煮え切らないやつなんだ』とおもっていたが、その裏でこんなやりとりがあったのねー!といまさならながら感動。そりゃ二転三転もするわあ。しかも大学生なんて。本当に変えようと思えば世界を動かすことができるのね、としみじみ納得。
今の時代はすごいね。 あ、他の章もちゃんと面白く読んでますよ!でも一番歴史と実感を持って読めたのが、このアメリカ企業の名ばかりプライバシー遵守について語られている『アメリカは裸の王様』事件。
近い将来に、仕事の流動化による監視社会の強化に息苦しさをかんじて、データの追跡から逃れたい(=アナログ回帰したい)人たちが増えて、田舎とか秘境とかに携帯を持たずに籠るような滞在需要がでてくるかも笑。