2021-07-21

京都の中国!黄檗の萬福寺で明朝と煎茶を思ふ

それは、渡来フィールドワークのために上狛駅に行く用事があり、JR奈良線の路線図をみていたときのことだ。
(私は駅名と路線図を見るのがとても好きな人間だが、鉄道自体に興味があるわけではないのでたぶん鉄子ではない。あえて言うなら駅名子?)

駅名の中に「黄檗」というものが。
これで「おうばく」と読む。
黄檗とは宗派の名前だ。あまりメジャーではないが、日本国内にもたくさんの黄檗宗の寺がある。
ちなみに、天王寺にある関羽を祀る大阪関帝廟は、正式には黄檗宗白駒山清寿院といい、中国との縁が深いため南京寺と呼ばれている。

それらの総本山が、この京都は宇治にある「萬福寺」になるのだ。なぜ!?いままで全然知らなかったけれど、本当に明朝の中国じゃないですか!!!そして、黄檗といえば、隠元和尚(正確には隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師)で、隠元さんといえば「いんげんまめ」や「煎茶道」を伝えた方ではないですか!!

当初「臨済宗黄檗派」などと称していましたが幕府の政策等により、明治9年、一宗として独立し「黄檗宗」を公称するようになりました。日本でいう「禅宗」は、臨済宗、曹洞宗、黄檗宗の三宗に分類されています。

他の2つの禅宗と黄檗宗が大きく違う点として、中国的な特徴を色濃く残しているということが挙げられます。江戸初期から中頃にかけて、黄檗宗の総本山・黄檗山萬福寺(京都府宇治市)の住職は、殆どが中国から渡来した僧侶でした。朝夕のお勤めをはじめ儀式作法や法式・梵唄(太鼓や銅鑼など様々な鳴り物を使い読まれる、黄檗宗独特の節のあるお経)にはその伝統が受け継がれており、今日の中国・台湾・東南アジアにある中国寺院で執り行われている仏教儀礼と共通する部分が数多く見られます。

萬福寺HPより

なるほど。だから、日本においてもお勤めは中国スタイルのまま行われるのか。また禅宗カテゴリとされているので座禅道場があったり、茶道(煎茶道)も広められたのか。さらに、黄檗宗といえば有名なのが、「普茶料理」である。黄檗宗のお寺に行くと、予約すれば「普茶料理」を体験できるお寺がいくつかある。萬福寺もそのひとつである。

普茶料理(ふちゃりょうり)とは、本宗の開祖隠元禅師が中国から伝えた精進料理で、「普茶」とは「普く(あまねく)大衆と茶を供にする」という意味を示すところから生まれた言葉です。
中国文化の香りがし日本の山野に生まれた自然の産物を調理し、すべての衆が佛恩に応え報いるための料理です。席に上下の隔たりなく一卓に四人が座して和気藹藹のうちに料理を残さず食するのが普茶の作法です。

禅宗では「五観の偈(ごかんのげ)」という食事の前に唱えられる偈文があり、食事をいただく事も修行のうちのひとつです。

ーーー萬福寺HPより

普茶料理|食す|黄檗山萬福寺 ‐京都府宇治市

それにしても萬福寺の境内の大きさと言ったら!お寺の裏を黄檗山(おうばくざん)に見立てて作られている境内なので、本当に敷地も建物の数も多い。さすが、総本山と行った印象だ。

駅から案内看板も出ているが、やはり多言語だ。京都にいながら不思議な異国感を感じる。

うーん、ビビッド。

中は、本当に明朝末期スタイル。風水を取り入れた独特の世界になっている。一番印象的なのはこの菱形石の参道である。この上を歩けるのは住持だけだそうだ。(気づかず歩いていましたが、歩きにくいことと言ったら!)

そして中国建築でよくみられる円窓や、赤い色使いなど。これらを見ていると本当に中国に迷い込んだかのようだ。

庭の蓮も満開。このあたりは仏教らしいが、しつらえはまさに風水。

萬福寺で有名なものの一つはこの布袋様(弥勒菩薩)だ。中国福建省出身の仏師に隠元隆琦さんが作らせたものらしい。いかにも中国を想起させるお姿で、かつご利益がありそうだ。ありがたいことにすぐ近くまで寄ってお姿を拝見することができる。赤い装飾に金ピカなのが中国らしい。

布袋様の絵馬もある。

かわいい「お魚」発見!

、、ではなく、これはれっきとした役割があるのだ。これは開梆(かいぱん)といい、時刻を告げるための吊り下げ木魚だ。小僧さんが定期的に叩きに来るが、これでなかなかしっかりした良い音がする。

そうこうしているうちに本堂から勤行の声明が聞こえてきた。しかし、これも中国スタイル。おそらく漢語で、お経のテンポも様式も異なる。黄檗宗は江戸時代に唯一幕府から公認された異教だから、これほどの規模のお堂が作られたのだろう。

ところで、先日わたしがワイワイ騒いでいた河内キリシタンの話にも関わるのだが、バテレン追放令を出したあとの幕府は、異教徒を弾圧し、庶民の管理を強化するために寺に檀家制度を取り入れていく。そう、檀家は地元の信仰心から自然にできたものではなく、幕府の管理統制方針の名の下に生まれたものなのだった。そして、それができたがために、日本の冠婚葬祭の仏教行事や、コミュニティで「出る釘」を打つための相互監視の文化が形作られていった。(だから現代にはなくてもいいものだとも言える。) そんな社会情勢のなかで、黄檗宗は唯一幕府公認の異教となる。だからこそこれほどの広大な総本山を開く事ができたのだろう。土地の名前が「黄檗」、と宗派名がついているのは、かなり珍しいことである。

そして、宇治という立地で忘れていはいけないのが「煎茶道」。この萬福寺は全国煎茶道連盟の本部でもある。お茶と座禅は密接な関係がある。臨済宗の栄西も「喫茶養生記」という「お茶」に関する本を書いているし、精神鍛錬のための厳しい座禅道場もある。

しかし!しかし、何故か今日あるのは「コーヒー」。しかも「布袋コーヒー」という名前だから面白い。

布袋コーヒー。なかなかシュールで面白い。

次回は「布袋茶」などを作ってくれたらおもしろいのに。

そんなこんなで、魅力に溢れた異世界の黄檗ワンダーランド、「萬福寺」。みなさんも、是非足を伸ばしてはいかがだろうか。本当に手入れが行き届いていてゆったりまったり過ごすことができること請け合いである。

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