私と書くことの素敵な関係
唐突だが、私の名前は文と書いて「あや」と言う。母が「問いを好み、学に励むを『文』と為す」という漢字の意味合いと、「良い治世を行った人徳者」という意味あいで周の建国者である姫昌への諡(おくりな)の「文王」からとっているということらしい。
(ちなみに祖母は、作家の幸田文さんのファンなので、彼女の名前からとったと思っている。さらにちなみに、私が大学受験のセンター試験で回答記入の順番をトチって第一志望校の合格率がE判定になったときに、二次試験での国語の筆記課題文が幸田文さんのものが出て逆転合格できたので、実はそれなりに縁があったのかもしれない。)。
考えてみれば、大して上手くもないのに小学生の頃は作文で良く賞を貰っていた。中学生の時に修学旅行で沖縄に行ったら、現地で書いたひめゆりの塔での感想文が展示された。母曰く、文章の中身の良さというよりは、文章のテンポが良いために感情移入しやすく、上手だと勘違いされやすいということだった。昔、東京リーガルマインドやZ会の小論文の講師をしていた母が言うのだから、あながち間違いではないのだろう。確かに、沖縄で書いた私の文章は、夢枕獏さんの陰陽師と張り合うくらい、感情と短文のオンパレードだった。当時は谷川さんの詩が好きだったということも短文に関係しているのかもしれない。
そうこうするうちに中学の終わりから高校で、稼ぎ頭の国語や英語で全く点数が伸びなくなった。理由は明白で、中学後半から、部活や通学に時間をとられているうちに本に興味がなくなったからだ。国語ができない人は英語も行き詰まる。そんなときにZ会の国語と英語の記述特訓の通信講座を受けることにした。Z会の記述課題は良問だがかなり難しく設問の記述量も絶妙なため、標準解答時間は二時間半だが、一問の解答を作るだけで一時間以上かかることもあり、何日もかけてクリエイティブな作品を作るような気持ちで書き直した。その結果、消しゴムをかけすぎて答案用紙をセロテープで止めて送ることもあった。でも、熟考しただけ先生も本気で添削してくれることが多く、返送の赤字を読むのが何より楽しかったことを覚えている。一年半経って、私の筆記の成績は国語も英語もV字回復以上に良くなった。その時に、ただ読むだけでなく、それ以上に自分で考える時間を持つことが重要だと言うことがわかった。小さい頃は絵本などを読みながら、無条件に気持ちが伝わる文についてきっと考えていたのだろう。
大人になってから、また本に興味を持つようになった。だが、読むのは実学書や歴史書ばかりになってしまった。そうすると、当然文章もそういうスタイルになってしまう。社会人になってからは、自分の文章はなんてつまらないんだろうと思ってきた。そんなときに、また通訳案内士の試験を受けるためにエッセイの練習をするという転機が訪れた。添削では、どの先生からもプレーンイングリッシュだがイージートゥーアンダスタンドと言われた。悪く言い換えれば、内容はわかりやすいが、稚拙な英語だということだ。内容がわかりやすいのは大いに結構、英語が母語じゃない人とも英語で話すんだからプレーンイングリッシュで何が悪いんじゃ!シングリッシュがあるなら、ミカディッシュだってあるんじゃ!!と思いながらも、一方で内容の面白さをなるべく伝える努力はした。結論、文法の正確性は全く伸びなかったが、コミュニケーションの力は伸びたため、文字量は少ないがライティングでもスピーキングでもノリとエンタメ?力で試験に合格した。だから外国の人に接するのは好きだが、正しい英語はいつまで経ってもしゃべれないままだ笑
その後、介護で会社を辞めて関西に戻ってからは、webサイトを手作りしてシルクロードのことについて書き始めた。自分がのめり込む話の時は、鼻息荒く調べながら文章を書き込んでしまうので1記事書くだけで1日があっという間に過ぎる。マジであっという間に過ぎる。
ただ、そうしてやたら長くて濃くて鼻息の荒い文章は自分で読んでいてもなんだか楽しいし、リズミカルだ(手直しは後からするにしても)。推敲に推敲を重ねると文章自体はわかりやすくなるが、書き直して全体を整えていくたびに、文にウキウキ感と勢いが欠けてなんだか味気なくなってしまう。あまりきれいな知図を描けないのも、その原理に近いのかもしれない。
というのが実は壮大な前置きだったのだが、要は最近、文章を褒めてもらえたり、文章のおかげで試験に通ることがよくあった。それが新鮮で嬉しくて、また改めて書く面白さを思い出した、モチベーションになったという、それだけの話だ。
そしてまた文章を書きたいと思うようになったのは、今少し気持ちにゆとりが出来、読書と熟慮の時間が取れるようになってきたからだと思う。この一連の話のせいで、本来書きたかったキャリアダイバーシティ支援の話題には一ミリも辿り着けなかったが、それについては次回に譲りたいと思う。